とりあえず宇宙とか神とか言ってるヤツはヤバい "北斎 宇宙をデザインす" を読んで

 

煽りタイトルのくせに、ヤバいとか言いながらこの本手に取ったのはわたしなんですけどね。

前回、面白くて眠れなくなる数学を読んだ時に、葛飾北斎

富嶽三十六景の富士山の稜線がy=e^xの関数と同じで美しい!

とか

同じく富嶽三十六景の波のかたちが黄金比になってて美しい!

とか言ってたので

 

ほんまかいな、本人はそんなこと考えてたんかいな。

 

と思いこの本を借りてみたんですが…

 

 

なんとなくもちあげるテンションが一緒

 

でした笑。

 

 

 

 

本の内容は、葛飾北斎の生涯と作品群を、テーマ別に紹介しています。

葛飾北斎って、先ほど述べた富嶽三十六景の富士山とか、波の絵とかが

有名だと思いますが、富嶽三十六景を描いたのはなんと72歳のときで

さらにその後75歳には富嶽百景という絵本を描いています。

90歳まで絵を描き続けるという求道者気質の人だったようです。

 

50歳まで真実を写し取ること(つまり模写)や描画技術の修練に力を入れていて

そこから70歳まで妖怪など空想上の生き物や、動物をカリカチュアして描いた、北斎漫画という絵本を描きました。

 

富嶽三十六景は、70歳のときに、

それまでの絵は取るに足らない。

とのたまってようやくたどり着いた境地みたいです。

 

 

 

これまで、もちろん葛飾北斎のことなんて全然知りませんでしたが、

水墨画みたいなものから、春画っぽいもの、風刺画、妖怪、動物やらなんやら

いろいろ描いた末の富士山だったんですね。ところどころ絵が挿入されているんですが、素人目でもこんなバリエーションに富んだ絵描けるんやな、と驚きました。

なんなら富嶽百景の後の80代の時の絵とか、極みの境地に達してる感すらあります、よくわかりませんが。雰囲気が厳か。

 

 

 

とまあ、北斎の生涯を絵とともに追っていけたのは楽しかったんですが、

この手の評論にありがちな、著者の猛烈な北斎推し。

他の絵描きとかを痛烈にディスった後の北斎推し。

絵から宇宙を感じ取ってしまうくらい北斎推し。

とりあえず宇宙って言っとけば宇宙やし。

宇宙ってワードセンスは完全に著者さんのものだと思います。

 

極めつけは、富嶽百景三編の羅に隔たるの不二、の解説が

後ろに白くおっきな富士山がおられるのに

著者さん、蜘蛛の巣の幾何学模様に注目しすぎて、

しかし、どこに富士山がいるのか北斎はわかって描いたのだろうか?

と言っている始末。

 

あと、数学の知識があったのではないか!?みたいなのも

本人がどこまで何を考えてしていたかはわかりません。が、幾何学には造詣が深かったらしいです。

 

 

絵を鑑賞するにあたって、描いた本人の想いや意図など汲み取れれば、答え合わせみたいでおもしろいのですが、偏見で独自の理屈を生み出してしまうこともありそうです。

感想レベルならいいのですが、この本のように、なにかと宇宙とか幾何学とかと結びつけていて、葛飾北斎自身がどこまで何を意図していたか、よくわからなくなってしまいます。

しかし、それが絵を鑑賞する際の醍醐味でもあり、自分の価値観が浮き彫りになったりしておもしろいですね。

 

 

 

誰かの生涯をはじめからおわりまで追いかけるの楽しいな、小学校の図書館にでも置いてありそうな伝記でも読もうかな。